グローバルキッズ武蔵境園

用途:認可保育所
定員:62人
建築面積:398.24m2
延床面積:398.24m2
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JR中央線の高架化にともなって生まれた高架下に魅力的な空間をつくり出し、これまで線路で南北に分断されていた街に回遊性を生みだし地域の活性化を目指した「JR東日本グループ中央ラインモールプロジェクト」。この保育園はその一環として武蔵境駅〜東小金井駅の中間に計画された。
敷地は90m×11.5mの細長い形状。約15m間隔で高架の柱が2本ずつ連続し、地面から4.7mの高さに桁がある。設計にあたってはメンテナンスを考慮し、高架とは50cm程度のクリアランスを保つことが条件とされた。
園舎は必然的に高架下に入り込んだような形態となり、その外観はあたかも5両編成の電車のようになった。
その5つの車両はそれぞれ保育室で、その中心を50mに渡り廊下が貫く。廊下の南側には保育室、北側にはトイレ等を設け、それぞれの車両が完結できるようにした。仕上はビニルクロス、ヒノキ羽目板、フローリングを用いて全体のトーンは併せつつも、貼り方を変化させることで車両ごとの個性を出した。
またこの園舎の特徴である長い廊下を「もうひとつの保育室」と捉えた。小窓や電車を意識したデザインを採用し、異年齢の子どもたちが接触する「子どもの社交場」としてデザインした。
保育室は子どもにエアコン風を直撃しない床吹出し空調と湿度環境を整えるデシカント式調湿換気装置で夏の冷え過ぎや冬の乾燥が起こらないようにした。ガスエンジン式ヒートポンプエアコンの採用でキュービクル設置の回避や床吹出し空調で床暖房を不要とすることでイニシャル・ランニングコストの低減を図った。
子どもが多様な光環境を体験できるよう、車両ごとに異なる仕上にあわせた照明計画とした。閉園後には室内の窓あかりを一部残し常夜灯とすることで、施設と周辺の防犯性を高めるとともに、地域の夜間景観におけるシンボルとしての役目も果たすことを目論んだ。
高架下で重機による揚重が不可能なため、現場での作業をできる限り減らすよう構法を工夫した。構造は軽量鉄骨とすることで人力での鉄骨建方ができるようにした。さらに窯業系サイディングの外壁や屋根を折板にすることで、現場での作業をできる限り減らした結果、工期短縮やコストダウンにもつながった。
(*写真:黒住直臣)