多様な活動を受け止める4つの「小さな家」 

あいわ保育園(竣工:2018年4月)

あいわ保育園保育園_外観

4つの小さな家が支える、多様な保育活動と柔軟な運営

 茨城県結城市の工業団地内に計画した企業主導型保育所です。建築主が経営する工場用地の一画に建設され、働く保護者の子育てを支えるとともに、地域の保育ニーズにも応える施設として計画されました。

 園舎は、大きなひとつの塊としてつくるのではなく、4つの小さな家を連結した構成としました。2つの保育室棟、病後児保育室棟、ホール棟で構成し、それぞれにトイレや収納など必要な諸室を備えています。

 これにより、棟ごとの単独利用が可能となり、土曜保育や朝夕の合同保育、習い事への場所の提供、地域交流イベントの開催など、さまざまな保育活動や地域利用に柔軟に対応できる環境を実現しました。

 外観は、同じ勾配を持つ屋根をさまざまな方向へ架けることで、複数の小さな家が集まったような親しみのある形態をつくり出しています。

園の中心となるホール棟と食育を支える厨房計画

 ホール棟は、2層分の天井高さを確保した園のシンボルとして計画しました。行事や軽運動に対応するだけでなく、工場で働く保護者と子どもたちが一緒に食事を楽しむランチコーナーとしての利用も想定しています。

 ホールに接する厨房は、床を30cm下げることで、子どもたちの目線でも調理師の手元が見えるようにしました。食材が調理され、料理へと変化していく過程を日常的に観察できる環境を整えることで、調理を身近に感じながら学ぶことのできる食育の場をつくっています。

建物全体を複合遊具として計画する

 バルコニーには、らせん階段、レンガのクライミングウォール、ネット遊具、滑り台など、複数の遊具を設置しました。また、その周囲を人工芝のマウンドやウッドデッキで囲むことで、建物全体をひとつの複合遊具として計画しています。

 子どもたちは日々の遊びの中で自然と身体を動かし、基礎体力やバランス感覚、危険を察知し回避する能力を身につけていきます。また、挑戦と発見を繰り返しながら、自信や達成感を育んでいくことを期待しています。

発達段階に応じた保育室と病後児保育室

 保保育室は、0・1歳児の乳児棟と2〜5歳児の幼児棟に分けて計画しました。それぞれの年齢や発達段階、活動内容の違いに配慮しながら保育環境を整えるとともに、園庭に向けて大きな開口を設けることで、内外が一体となった開放的な空間を実現しています。

 病後児保育室は、玄関やトイレなどを一般の保育室とは別に設けることで動線を分離し、安心して利用できる環境を整えています。また、2室を設けることで、感染症と非感染症の子どもを同時に受け入れることを可能としました。

2つの園庭が育む子どもたちの成長

 園舎を敷地の中央に配置することで、南北に性格の異なる2つの園庭を計画しました。

 南の庭は遊具と中央の広場を中心としたフラットなグラウンド、北の庭は土管や築山を中心とした自然遊びの場です。両者はウッドデッキによってつながれ、屋外へと延長したもうひとつの保育室として機能しています。

 複合遊具や園庭での遊びを通じて、子どもたちは基礎体力や身体能力を高めるとともに、危険を予測し行動する力を身につけていきます。また、年少児は年長児の姿を見て学び、憧れ、挑戦する気持ちを育みます。一方で年長児は年少児の世話や教える経験を通して、自信や思いやり、譲り合う心を身につけます。

 異年齢の子どもたちが互いに刺激を受けながら成長していく環境を、建築によって支えることを目指しました。

私たちが大切にしていること

 私たちは、園舎を保育を行う単なるハコではなく、子どもたちの成長を支える「もう一人の保育士」だと考えています。

 だからこそ、それぞれの園が大切にする保育理念や教育方針を丁寧に読み解き、建築として形にすることを大切にしています。

 あいわ保育園においても、多様な保育活動を受け止める柔軟な運営と、子どもたちの遊びや挑戦を支える環境づくりを通して、建築そのものが保育を支える園舎を目指しました。

鳥観

外観

夜景

ホール棟とフラットなグランド

築山のある遊び場

2層分の天井高のホール

保育室

保育室

病後児保育室

子どもの視点でも見える調理室

カラフルなトイレ(撮影:黒住直臣)

計画地 茨城県結城市
用途 企業主導型保育所
定員 30人
敷地面積 370.93m2
建築面積 299.88m2
構造 木造
階数 平屋建
受賞 第13回キッズデザイン賞
掲載 建築ジャーナル2019年12月号、近代建築2018年9月号

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