JR中央線の高架化にともなって生まれた高架下に魅力的な空間をつくり出し、これまで線路で南北に分断されていた街に回遊性を生みだすことで地域の活性化を目指した「JR東日本グループ中央ラインモールプロジェクト」。この保育園はその一環として武蔵境駅と東小金井駅の中間に計画されました。
敷地は90m×11.5mの細長い形状。そのうえ約15m間隔で高架の柱が2本ずつ連続し、地面から4.7mの高さに桁があります。設計にあたっては高架のメンテナンスを考慮し、50cm程度のクリアランスを保つことが条件とされました。
園舎は必然的に高架下に潜り込んだような形態となり、その外観はあたかも5両編成の電車のようになりました。
高架下のため重量鉄骨を重機で揚重することが不可能で、かつ隣接する道路も同時に工事していたため工事ヤードが小さかったため、構造体を軽量鉄骨とし人力による建方ができるようにしました。また外壁には窯業系サイディング、屋根には折板を採用する等、現場での作業をできる限り減らす工夫をしました。
5つの車両はそれぞれ保育室で、その中心を60mに渡って廊下が貫いています。廊下の南側には保育室、北側にはトイレ・受入室・収納を設け、それぞれの車両で保育を完結できるようにしました。
仕上はビニルクロス、ヒノキ羽目板、フローリングを用いて全体のトーンは併せつつも、貼り方や照明を変化させることで車両ごとの個性を出すようにしました。
またこの園舎の特徴である長い廊下を「もうひとつの保育室」と捉え、小窓や車窓を模した開口部のデザインとすることで、異年齢の子どもたちが接触する「子どもの社交場」としてデザインしました。
保育室は子どもにエアコン風を直撃しない床吹出し空調と、湿度環境を整えるデシカント式調湿換気装置で夏の冷え過ぎや冬の乾燥が起こらないようにしました。ガスエンジン式ヒートポンプエアコン(GHP)の採用で、キュービクルの回避や床吹出し空調で床暖房を不要とすることでイニシャルおよびランニングコストの低減を図りました。
計画地 | 東京都武蔵野市 |
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用途 | 認可保育所 |
定員 | 62人 |
敷地面積 | 997.05m2 |
建築面積 | 398.24m2 |
延床面積 | 398.24㎡ |
構造 | 鉄骨造 |
階数 | 平屋建 |
メディア掲載 | 新建築2015年4月号/内装木質化ハンドブック2014年/近代建築2014年6月号 |