設計コンセプト
台東区谷中の認可保育所の建替計画です。私たちは、この地域ならではの街並みや保育環境を大切にしながら、子どもたちの成長を支える園舎を目指し、「地域に親しまれる外観」「和の趣を感じる内装」「子どもの発達を育む園庭」という3つのコンセプトを提案しました。
子どもの成長を見守る「先生」となる出窓
外観は、コンクリート打放しを基調に、カラフルな出窓をランダムに配置することで、落ち着きのある中にも子どもらしい楽しさや賑わいを感じられる表情をつくり出しています。出窓が生み出す陰影は、時間や季節によってさまざまに変化し、子どもたちに光や風、季節の移ろいを自然に教えてくれます。
私たちは、出窓も子どもたちの成長を支える「もう一人の先生」として考えています。子どもたちは窓辺から空を見上げ、街並みを眺め、差し込む光や移りゆく影の変化を感じながら、一日の時間や四季の変化を自然と学んでいきます。建築そのものが子どもたちの感性や好奇心を育む保育環境となるよう計画しました。
谷中の街並みに調和する「和の趣」の保育空間
寺院や歴史ある街並みが残る谷中という地域性を踏まえ、内装には日本らしい「和の趣」を取り入れました。
玄関は木の格子を四周に巡らせ、木の温もりに包まれた落ち着きのある空間としています。さらに間接照明を組み込み、やわらかな光が壁面を照らすことで、登園する子どもや保護者を優しく迎え入れる園舎の顔となる空間を計画しました。
1・2階の保育室では、出隅にコーナーガードを兼ねた付け柱を設けるとともに、市松模様の格子天井の中に照明を組み込み、空間全体にリズムと温かみを与えています。床にはひのきのフローリングを採用し、木の香りや質感を感じながら過ごせる保育環境としました。地域の風景になじむ落ち着いた空間でありながら、子どもたちが毎日を心地よく過ごせる園舎を目指しています。
子どもの発達を育む4段の屋上園庭
都市部では十分な園庭を確保することが難しいことから、本計画では隣接する広大な防災広場(初音の森)を積極的に活用し、走り回る遊びは公園で行うことを前提に、園舎内では建築ならではの体験ができる屋上園庭を計画しました。
3歳以上児が主に利用する屋上園庭は、約1mずつ高低差を設けた4段構成とし、「食べる」「遊ぶ」「育てる」という3つのテーマを持たせています。それぞれの庭が独立した空間ではなく、らせん階段によって立体的につながることで、子どもたちは園庭全体をぐるぐると巡りながら、さまざまな遊びや体験を楽しむことができます。
1段目は「食べる庭」です。同じフロアにある調理室から給食を運び出し、天気の良い日には屋外で食事を楽しめる空間としました。日々の食事を自然の中で楽しむことで、食への関心や季節の移ろいを感じられる場となっています。
2段目と3段目は「遊ぶ庭」です。ネット遊具や滑り台、築山などを配置し、登る・滑る・走る・くぐるといった多様な動きを引き出す計画としました。高低差のある空間を行き来することで、バランス感覚や脚力、全身を使った運動能力が自然と育まれます。また、最も広い2段目ではプール遊びも想定し、真夏の日差しから子どもたちを守る大型の日除けシェードを常設しています。
最上段は「育てる庭」です。果樹や野菜、ハーブを子どもたち自身が育て、収穫することで、食育や自然体験につながる場としました。花や実に集まる鳥や昆虫との出会いは、子どもたちの五感や好奇心を育み、日々の保育をより豊かなものにします。
さらに、最上段の「育てる庭」と1段目の「食べる庭」をらせん階段で結ぶことで、園庭全体に回遊性を持たせました。子どもたちは遊びながら自然に高低差を行き来し、多様な身体の使い方を繰り返すことで、心身の発達が促されます。屋上全体をひとつの立体的な遊び場として計画することで、限られた敷地の中でも、子どもたちが毎日わくわくしながら成長できる保育環境を実現しています。
一方、地上には1・2歳児専用の園庭を設けました。植栽や砂場を配置し、小さな子どもたちが年長児を気にすることなく、安心してゆったりと遊べる環境としています。
私たちが大切にしていること
私たちは、園庭は子どもを遊ばせるための場所ではなく、子どもたちの毎日の生活を豊かにし、成長を支える「もう一つの保育室」だと考えています。建築を通して、子どもたち一人ひとりの発達を育む環境づくりを目指しました。
| 建築主 | 社会福祉法人立華学苑 |
|---|---|
| 計画地 | 東京都台東区 |
| 用途 | 認可保育所 |
| 定員 | 75人 |
| 敷地面積 | 3332.37m2 |
| 建築面積 | 261.80m2 |
| 延床面積 | 491.69m2 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造 |
| 階数 | 3階建 |












