
福島県いわき市の官庁街に建つ事業所内保育施設と派遣会社の事務所のプロジェクト。夜間保育や延長保育がほとんど行われていない地方都市の現状を踏まえ、人材派遣会社自らが保育所を運営することで、小さな子どもをもつ保護者の社会復帰を手助けしようという試みです。
1階の道路側には派遣会社の事務所、奥に保育所、2階には共用会議室を設けました。これらを2つの中庭、バルコニー、吹抜で視線は通しつつ緩やかに間仕切ることで、どこからでも空が見えるようにしました。中庭を介して保育所と事務所を配置することで、子どもの事故の防止や防犯への配慮と同時に、賑やかな子どもの活動が事務所内に潤いを与えることを期待しました。
保育所内は、子どもの回遊性を重視して、中庭と腰高の家具で「くびれ」のあるワンルーム空間をつくりました。砂場やシンボルツリーを配した中庭は、安全な遊び場であるとともに、四季の移り変わりや天気の変化、時の流れ等を教える先生としての役目も担っています。
回遊動線に接して小さなスペースを設けました。床を下げた絵本コーナーは読み聞かせに適したスペースであり、天井高を抑えたおもちゃコーナーは子どもがこもって遊ぶ秘密基地です。
将来、全体が保育所になることも想定しているため、保育所と事務所間の間仕切壁は耐力壁とはせず、容易に撤去できるようにしました。その結果、保育所は8の字型の回遊性をもつ平面となり、より複雑で子どもたちにとって刺激的な空間となります。また現在の事務所は軽運動やお遊戯会など行事にも適した大空間となります。
これらのさまざまなスペースを、場所ごとの広さや使い方に適した天井高にあわせてねじって折り曲げた大屋根で覆うことで、空間に変化を与えながら、まとまりある一体的な空間とすることを目論みました。
計画地 | 福島県いわき市 |
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用途 | 事業所内保育施設 |
敷地面積 | 549.49m2 |
建築面積 | 262.23m2 |
延床面積 | 299.63m2 |
構造 | 木造 |
階数 | 地上2階建 |
受賞 | 第3回キッズデザイン賞 建築・空間デザイン部門2009年 |