イエナプラン教育を行う日本初の認定校として2019年に開校した大日向小学校。それに隣接して大日向中学校は増築されました。
多くの特別教室、給食室やランチルームは渡り廊下で小学校とをつないで共用し、新校舎には小学校にはない技術室と中学生に相応しい書籍を身近にするため図書室を新設しました。
平面は約6mのスパンを繰り返すプラン。1階には普通教室と技術室等を設け、2階に図書室を設けました。図書室の窓からは普通教室の高窓を通じて、地域で古くから親しまれている茂来山を臨むことができます。
外観は、緩い勾配の片流れ屋根とし、薄く出の深い庇を加えることで水平線を強調したデザインとしました。さらに白い校舎とすることで、背後のカラマツの緑とコントラストをなす構成としました。
構造は、佐久穂町の特産品であるカラマツを用いた木造としました。カラマツは変形やひび割れが起こりやすく、集成材に加工して用いられる事が多いですが、この校舎では地元の材木会社でも取り扱える製材を用いることとしました。
施主の意向で地元の工事業者で施工することが当初より決定してましたので、設計段階で材木会社にヒアリングをしたところ、規格外寸法の7m材も入手可能でしたので、直ちに森林から伐採・乾燥をしてもらいました。強度等級がスギやヒノキより高いカラマツの梁により、小ぶりな材で3.5間のスパンを飛ばすことが可能となり、約2.4mの片持ち庇も実現することができました。
さらに内装材や木製建具にもカラマツを積極的に用いることで、統一感があり、全体的に温かみのあるデザインとなりました。
これらにより、地元のカラマツを、地元の工事業者が監督し、地元の職人が校舎をつくることで、資源と技術の地産地消を実現しました。
生徒が快適な環境下で授業を受けられるよう、教室の環境計画を整えました。
教室上部の高窓は、重力式の自然換気を可能とするとともに、天空光を採り入れ照明とあわせて十分な照度を確保しました。
空調計画では、教室内に床置型空調機を設置しました。吹き出された冷暖房空気はアルミサッシ付近の床面に設置した吸込口に導かれ、床下を経由して空調機に戻る計画としました。
これにより、冬季には窓面の冷えた空気を吸込むため教室内の快適性が保たれます。また晴天時に床面が取得する日射熱を床下で回収することができ、床面の冷え込みも防止できます。
一方、夏期の冷房時には床面に滞留する冷気も床下で回収することもできますので、空調機の効率的な運転を実現し、省エネにも寄与するようにしました。
換気計画では、室内のCO2濃度に応じて換気風量を自動制御して、効率的に良好な空気環境を保つようにしました。
建築主 | 学校法人茂来学園 |
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計画地 | 長野県南佐久郡佐久穂町 |
用途 | 中学校 |
定員 | 90人(30人/学年×3学年) |
敷地面積 | 16,462.88m2 |
建築面積(増築部分のみ) | 584.88m2 |
延床面積(増築部分のみ) | 684.42m2 |
構造 | 木造 |
階数 | 2階建 |