計画地は、石川県小松市の北部に位置し、大型のロードサイドショップが建ち並ぶ国道に面しています。その一方、敷地の背後には広大な田畑が広がり、その先には地域のシンボルである白山連峰を遠望できる理想的な立地です。
山崎設備設計は、WEBを活用した戸建住宅の設備設計業務を早期から行い、毎年業績を拡大してきました。現在では様々な用途に進出し、更なる事業規模の拡大が見込まれています。今回の社屋の増築工事はスタッフの増加への対応と、スタッフ間のコミュニケーションの活性化や、経済産業省が推進する健康経営による知的生産性の向上を目的として行われました。
また設備設計事務所の社屋を増築する姿勢として、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、ZEB推進の一環として取り組みました。
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意匠計画
増築棟の外観は、金属製パネルと大きなカーテンウォールで構成しました。棟に沿って上っていく切妻屋根は会社の未来の発展と常に向上心を持って設備設計業務に取り組むスタッフの姿勢を表現しています。
増築棟は2階建の鉄骨造で、既存棟と下屋を介して接続しました。均等スパンのスケルトン天井は、構造美を際立たせ、通常は隠れてしまう設備配線や配管のルート、接合方法等を実物として学べる学習素材となっています。
薄めのグレーを基調とした1階は執務の場です。ワンルームの事務室は今後のスタッフ増にともなうレイアウト変更に対応しています。玄関ではシンボルツリーが来客者を迎え、会議室からは絵画のように切り取られた白山連峰の雄大な景色が見渡せ、来客者に最高のおもてなしを提供します。
濃いグレーを基調とした2階はスタッフ間のコミュニケーションの場です。スキップフロアや天井の変化で多様な環境を提供し、スタッフ間の交流を促すようにしました。
業務用厨房機器を備えたバー、カフェ、ラウンジは、社員食堂として若い一人暮らしのスタッフに対して栄養満点の食事を提供するとともに、夜は杯をかわしながら議論や談笑し1日の疲れを癒やす場としました。
階段ベンチとカフェは、全スタッフが一同に介して勉強会や講義ができるスペースです。プロジェクターで映写した画像や動画を用い、最新技術の共有や、議論を行うことができる場としました。
ジムは、共に汗を流すことでスタッフ間のコミュニケーションの活性化を図るスペースであるが、それと同時に、健康経営の一環として設けました。社員食堂での食事提供も含め、スタッフの健康に投資することで、スタッフの活力や生産性の向上を目論みました。
吹抜の上部に浮かぶ四周ガラス張りのスカイラボは、社屋内を一望できると同時に、白山連峰の景色も享受できるこの社屋一の場であり、象徴的につくりあげました。
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設備計画
外皮性能の向上や高効率な断熱材の使用といったパッシブ技術に加え、エネルギー効率の高い機器や全熱交換器の導入、人感センサー・タイマー・調光機能を加えたLED照明の採用、吹抜のある大空間を効率的に空調するための床下空調システムの採用といったアクティブ技術を用いることで、建物内のエネルギー消費量を最小限に抑えつつ、快適な環境を実現しました。
さらに、創エネルギー技術として屋根に太陽光バネルを設置し、消費エネルギーの一部を太陽光発電でまかなう計画としました。この取り組みにより、年間の一次エネルギー消費量の63%を削減、地域初のNearlyZEBの認証を取得し、環境評価・認証制度である「BELS」では星5を取得しました。
加えて、一次避難所として小松市と協定を結び、停電時にもエネルギー供給を可能とするレジリエンス機能を地域社会に提供することも可能となりました。(山崎設備設計 山崎純悟)
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アフターコロナの働き方としてテレワークが普及し、オフィス面積の縮小が進む中で、オフィスのあり方も大きく変化しています。そのような時期にオフィスの増築を進めたのは、同社が「集まって働く」ことの重要性を強く認識しているためです。スタッフ間のコミュニケーションの活性化や健康経営が、知的生産性の向上につながり、ひいては依頼者の利益にも貢献すると考えています。この社屋はその実践の場として実現しました。
さらに、自らの社屋でZEBを実証していくことで、2025年のカーボンニュートラル達成に向けた一歩を踏み出し、今後の設計においても環境配慮型施設の具体的な提案と普及を推進していく所存です。
計画地 | 石川県小松市 |
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用途 | 事務所 |
敷地面積 | 1,242.96m2 |
建築面積 | 600.44m2 |
延床面積 | 969.06m2(既存棟252.27m2+増築棟716.79m2) |
構造 | 鉄骨造 |
階数 | 2階建 |
受賞 | 第52回いしかわインテリアデザイン賞 大賞/第37回日経ニューオフィス賞 中部ニューオフィス奨励賞 |