中国の子育て世代への保育空間の提案

和美嬰童国際幼児園(竣工:2017年4月)

tianjin1_hall

 中国天津市の幼稚園の計画。新市街に位置する住宅地内の既存の戸建オフィスのフルリノベーションです。
 現在の中国の子育て環境は、3歳児から幼稚園に預けて幼児教育を行いますが、それ以下を対象にした保育所はなく、母親か祖父母が子育てするのが一般的です。しかし母親の子育て経験の不足や、祖父母による一世代前の子育ての考え方との違いから、家庭内のトラブルが頻発し社会問題化してきています。
 施主はここに大きな問題意識を持ち、これを解決するためには0歳児からの保育園の運営実績が豊かな日本に学ぶことが最良であると判断し、私たちに設計の依頼がありました。

 施主からの要望のひとつに「PM2.5による空気質の悪化で外遊びが厳しいため室内園庭をつくりたい」ということがありました。かなや幼稚園グローバルキッズ飯田橋園のページを見ていたようで、私たちは既存建物の特徴を生かして、建物中央の吹抜部分に小ぶりな室内園庭をつくりました。人工芝の築山、すべり台、ジャングルジムを散りばめ、さらに2階から滑り降りるチューブスライダーを設置して立体的な園庭としました。

 室内園庭を中心にして、1階には2歳以上児室を、2階には0、1歳児室を配置しました。保育室の内装は、子どもが落ち着いて過ごせるよう、フローリングの床、腰壁、白い壁と天井で、構成しました。

 地下には軽運動やリトミック等、多目的に利用できる遊戯室兼ランチルームを設けました。調理室を隣接させることで子どもに調理の過程を見えるようにし、子どもたちの「食」への意識を高めています。カラフルな円形の照明をランダムに設置することで保育室とは異なる楽しげな空間としました。

 短い時間であっても有意義な外遊びを子どもに提供できるよう園庭もしっかりと設えました。床には人工芝を敷き詰めて安全性を確保しつつ、保育室からの避難を兼ねたウッドデッキには変化のある階段を設けることで、それを上下することで子どもたちの身体的な発達を促すことを目論みました。(撮影:黒住直臣)

保育室

保育室

保育室

ランチルーム

調理室

ホール

ホール

園庭

外観(既存のまま)

計画地 中国天津市
用途 保育所
延床面積 約700m2
階数 地下1階、地上2階建

和美嬰童国際幼児園