階段について想うこと

2022.05.14

綺麗な階段(わんぱくすまいる保育園)

 まだ若かりし頃、師匠の曽根幸一氏から「階段が綺麗にできたら建築家として一人前」と言われてきました。

 最初は意味が分からなかったのですが、保育園、幼稚園、認定こども園等、子ども関連施設の設計を多く手がけるようになって、なんとなく分かってきた感じがします。

 特に都内に住んでいる場合、戸建住宅や共同住宅の低層階に住んでいない限り、階段を利用することが少なくなりました。駅でもショッピングモールでもマンションでも、エスカレータやエレベータが設置されています。一方、園舎にはバリアフリー法や条例にともなってエレベータを設置することがあっても、多くは給食の上げ下ろしや大型荷物の運搬等に限定され、子どもがエレベータを使うことはほとんどありません。

 となると重要なのは、いかに綺麗な階段をつくるかということ。綺麗な階段は、フロアを上下する動線としての役目だけでなく、子どもたちの遊具にもなります。階段に腰掛けてお話しすることもできますし、上下することで自然と体力増進やバランス感覚を身につけることができます。


目次

  1. 螺線階段
  2. 螺旋状の階段
  3. 大階段
  4. スケルトン階段
  5. 照明での演出
  6. カラフルな階段
  7. 終わりに

螺線階段

 螺線階段は、滑らかで美しいフォルムを持った階段で、階段自体がアート作品であると言えます。しかし、踏面(水平面)の内側と外側で寸法が異なり、段を踏み外し転倒や転落する危険が高いため、バリアフリーを確保する場合には適しません。が、条件が許される場合には、隙あらば螺線階段をつくってきました。

 モニカ都立大前園では、大きく弧を描く螺線階段で、2階の廊下と1階の遊戯室をエレガントにつなぎました。

 一方、あいわ保育園の螺線階段は、滑り台までの動線のひとつですので遊具の一部ですので、半径が90cmと非常にコンパクトにつくりました。


螺旋状の階段

 螺線階段と似た形態のものに「螺線状の階段」があります。これは私がつくった単語ですが、4つの直線の階段を直角に組み合わせて四隅に踊り場をつくった階段をそう呼んでいます。

 螺旋階段のように、回転しながら上下しますが、螺旋状の階段は直線の階段の組み合わせですので、踏面は内側も外側も同じ寸法で、転倒や転落の危険が低くなります。また、1フロア3m程度の階高であれば、75cm上下するごとに踊り場がありますので、万が一転落しても大けがをしなくてすみます。

 わんぱくすまいる保育園モニカ矢口渡園ともに、階段周りはガラスで覆いました。これにより子どもたちが上下することで、園内の様々な景色を堪能することができます。


大階段

 大階段も魅力的です。

 みらいく中村橋園では、多目的ホールの6.5m幅のまま上る大階段をつくりました。

 通常の階段より勾配を緩くして、子どもたちでも安全に上れるようにし、遊具として遊ぶこと以外にも、合唱や演奏会、集合写真の撮影などにも利用できるよう考えました。


スケルトン階段

 蹴込(けこみ=階段の立ち上がり)がないスケルトン階段も魅力的ですね。

 子ども関連施設の場合は、転落する恐れがありますので、なかなかつくれませんが、住宅では多いです。

 K邸では、玄関を入るとスケスケの鉄砲階段(一直線で上りきる階段)があり、階段越しに地窓(床付近の窓)から自然を取り込んでいます。

 実家のリフォームでは、リビングとロフトをつなぐスケルトン階段はコンパクトにつくりましたので急勾配です。手すりも壁際にしかありませんので、上下するのは結構怖いですが、リビングのアクセントになっています。

 子ども関連施設では、かなや幼稚園でつくりました。もちろん子どもが転落しないように蹴込には強化ガラスを用いています。

 相当勾配を緩くしない限り、上下する際にスカートの中が見えてしまいますので、スケルトン階段をつくる時には、施主への十分な説明が必要です。


照明での演出

 蹴込が光る、蹴込と踏面の入隅が光る、手すりが光る等、照明との組み合わせも面白いです。LED照明に置き換わって小さくなりましたので、いろんな演出ができるようになりました。

蹴込が光る階段(モニカ本駒込園)
蹴込が光る階段

カラフルな階段

 最後に、カラフルな階段です。

 踏面や蹴込の一面をベタッと塗装することもありますし、段鼻(踏面の先端)の滑り止めの溝を塗装したり、カラフルなノンスリップ(株式会社アシスト AFOLA Previo M103)をアクセントとして使うこともあります。

蹴込がカラフルな階段(おはよう保育園 清澄)
蹴込がカラフルな階段
段鼻がカラフルな階段
段鼻がカラフルな階段

終わりに

「一人前の建築家」になれるよう、今後も綺麗な階段づくりに精進します。


投稿者プロフィール

石嶋寿和(いしじまひさかず)
東京都渋谷区生まれ、茨城県古河市(旧猿島郡総和町)出身。
曽根幸一・環境設計研究所を経て2004年に独立し、個人事務所として石嶋設計室を設立。2006年には株式会社石嶋設計室に改組。 独立後もスタッフ時代に担当していた都市デザインの仕事を続けていたが、たまたま90㎡の保育所の内装設計を依頼され、現在までに新築、改修を問わず、200園以上の子ども施設の建築に携わる。
現在では、子ども施設の建築を通じて培ったノウハウを生かし、幅広く新しい建物を生み出している。